ぶれない水球魂 宇野拓海
今回のbeyondは、初登場の水泳(水球)部、3回生宇野拓海選手です。友人からは、“真面目だけどユーモアがあって面白いやつ”と評される性格。でも、胸に秘めるものは誰よりも大きい。そんな宇野選手の水球人生に迫ると、決して単調ではない今までの茨の道のり、そして、水球への熱い想いが見えてきました。
写真提供:立命スポーツ編集局(https://twitter.com/ritsumeisports)
活発なスポーツ少年の水球との出会い
小学校6年間は競泳、中学3年間は野球と、幼いころからスポーツに打ち込んできた宇野選手。しかし、本質的に競技を楽しむことはなかった。そんな彼の転機は中学3年時のこと。オープンキャンパスで出会った先生は偶然にも、水球部の顧問だった。先生は彼の経歴をきいて、水球部に勧誘。先生の話をきいた彼も水球に惹かれ、高校では水球をやることを決意。その後、受験勉強の末、県内屈指の強豪校、千葉県立幕張総合高校の扉を開く。水球部にも入部し、待ちに待った、高校生活がスタート。しかし、始まってみて部活の苛酷さを思い知った。年間で休みは数日、平日は4時間、土日は1日練習・・・彼は、当時をこう振り返る。「高校生活=水球で、授業なんて正直どうでも良かった。水球一色の生活だったなぁ。」忘れ難い青春を懐古するように苦笑いした。
必死の思いで練習に食らいついた、宇野選手。しかし、辛さのあまり、『もう水球から離れたい』と思い始め、1年生の途中には退部も考えた。そんな境地の中で、真摯に彼に向き合い、背中を押してくれたのは、担任の先生だった。『あの時、水球をやめないでいてくれた自分がいたから、苦しいことも、嬉しいこともたくさん経験して成長できた。それでこそ今の自分がいる。』だからこそ、水球をやめそうになっていた彼を応援し、支えてくれた担任の先生には、今でも感謝の念が尽きないという。6年前のことながらその記憶は宇野選手の脳裏にしっかり焼き付いていた。
写真提供:立命スポーツ編集局(https://twitter.com/ritsumeisports)
高校生活を懸けた水球、辛い練習を乗り越えた、その先に。
決して順風満帆とは言えなかった、紆余曲折の高校水球生活。その現役生活も終わりを告げようとしていた。迎えた、高校最後の大会「全国高等学校総合体育大会千葉県予選」。結果は、思わぬものだった。相手に弱みをつかれ、ペースを掴めない試合が続き、チームは予選敗退。チームとしては振るわなかったが、試合で活躍を見せた彼は、国民体育大会への切符を掴んだ。せっかく掴んだ全国の場を無駄にはできない。国体に向けて、再び猛練習。大会当日は、地方テレビの中継も入り、県を挙げて、盛り上がりを見せていた。皆からの期待を背負い、辿り着いた全国という舞台。予選、福岡県代表との対決。拮抗した試合は、ペナルティースロー戦にまでもつれ込むことに。そこで抜擢されたのが宇野選手だった。今までに1度もペナルティースローを外したことがなかったさすがの彼も、全国という初舞台には緊張していた。全国は魔物だったのかもしれない。その1球は、わずかにゴールを外れた。結果、チームは惜敗し、予選で姿を消した。きけば、その相手はその後、ベスト5まで進んだ強豪だったという。だからこそ、『あの1戦で勝てていれば、あの1球が決まっていれば…』大きな責任を感じ、後悔の念が残るまま、高校水球生活は幕を閉じた。
ブランクを経て、水球への想い再び。新たなステージで…
『高校3年間で完全燃焼した』と感じていた宇野選手は、水球で進路選択はせず、浪人を決意。この間は水球のことは忘れ、ひたすら勉強に励んだ。大学受験を控え、浪人生活も間もなく終わるという頃、ふと『水球やりたい』胸が騒いだ。水球には終止符を打ったはずだった。それでも、水球への想いはやはり拭いきれなかった。この自分の気持に素直に答え、大学でも水球を続けることを心に決めた。縁あった立命館大学の水球部に入部した。入部当初は、“大学の水球部”と、今までの自分が知る“水球部たるもの”とのギャップに困惑もあった。時には練習に物足りなさも感じたという。最初は慣れなかった、自分にとっての水球の在り方。でも、大学では、水球だけをやっていては許されない。となれば、部活の時間が減ることも当たり前。その上で、生活を送ってみると、部活に勉強、更にはバイト。3つを平行して回す生活は、楽ではなかった。3回生になった今でも「移動時間で勉強しながら、部活なければもっと勉強できるのになぁ、とか考えちゃいますよね」と笑った。やはり両立は大変みたいだ。
写真提供:立命スポーツ編集局(https://twitter.com/ritsumeisports)
変わっても、変わらないもの
ブランクなど感じさせない復活ぶりで、宇野選手は1回生から、頭角を現す。入部して間もなく迎えた、関西学生リーグ。全国に繋がる、大事な大会。立命館はそれまで12連覇という記録を更新していて、関西では群を抜いて強かった。しかし、その年、その連覇は途絶えた。龍谷大学との1戦、後半追い上げを見せるも一歩及ばず、惜しくも敗れた。名誉挽回をかけた次の年、2019年。今度は、びわこ成蹊スポーツ大学の壁に当った。負けを喫した立命館は、2年連続で優勝を逃した。入部前までは続いていた連覇記録が、入部後はその記録は途絶えたまま。「“関西学生リーグ優勝”この目標だけは譲れないんです。」そう言い切った。その眼は、力強くまっすぐ先を見据えていた。『大学こそは絶対に後悔なく終えたい。』高校時代の“あの日の後悔”を忘れられない彼の想いは人一倍強い。今でも、“あの日の記憶”は自分を奮い立たせるという。短い練習時間でも妥協は許さない。全体練習以外での筋トレも欠かさない。更には体のために食事にも気を付ける。そしてどんな時でも支えてくれる両親への感謝を忘れない。どこまでもストイックな宇野選手。例え高校時代よりも練習時間は減っていても、やはり、水球が生活の中心であることは変わらない。水球の在り方は変わっても、水球を想う気持ち、水球に懸ける情熱は決して変わらぬ揺るぎないものだった。
王座奪還を目指す立命館水球部。そして、持ち味のパワーでアグレッシブな攻撃を魅せる宇野選手。彼らの飛躍はまだまだこれから、期待に胸が高鳴った。今後の活躍に目が離せない。
インタビュアー:立命館大学産業社会学部・2回生・市川菜々香
この記事を読んで、水球部に興味をもった方は、是非試合に足を運んでみてください。
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