今回のBeyondは初登場準硬式野球部の伊藤大晟選手です。数学もできるスマートな彼は
だらだらこなす無駄な練習は嫌い、効率的にやることを好む。でも、実は目標に向かうその姿勢は地道で貪欲。大好きな野球人生には彼の全てが詰まっていました。
「野球が好きだから野球を続けていて、野球が好きだから練習を頑張れて、野球が好きな理由は野球が好きだから?」
「何が」とか「なんで」とかそういうものではなくて、全ては”野球が好きだから”という言葉に集約される彼の野球への想い。10年以上の競技人生で、何があろうと、野球が好きということは一切ぶれなかった。その信念こそあって、彼は試練を乗り越え、大きく成長し強くなってきた。
夢の舞台で掴んだもの
そんな彼の野球人生の始まりは小学3年生。野球好きの父の影響でクラブチームに入った。
そこから野球にはまった彼は、より本格的に硬式でやるために、シニアクラブチームに入団し、中学でも野球を続けた。
中学3年間で忘れ難い記憶がある。それは彼の夢舞台での記憶。3年生の春、長野県予選を突破し、北信越大会に出場した。それまで県の壁をなかなか超えられていなかったチームにとって、北信越という舞台は特別なものだった。チームの勢いはそのまま、そこでベスト8まで勝ち進んだ。
「あの経験は1つのターニングポイントでしたね。いつもとは違う空気間で試合をしたこと、またそこで勝てたことは、その後の自分に変化をもたらしました。やる気も俄然上がったし、自信がつきました。」
この経験は彼にとって、今でも忘れない栄光であり、財産となった。
野球ができないということ。
高校での滑り出しは順調、1年生ながら選手として起用された。しかし間もなく、思わぬ事態が彼を苦しめた。ピッチャーにとって大事な肘を怪我してしまった。痛みを我慢して続けていたら、気づいたころには、手術をしないといけないほどまでに状態は悪化していた。怪我が判明してからは苦悩の日々が続いた。
「長い間、大好きな野球ができないことが何よりも辛かった。やりたくてもできなくて、リハビリをするしかなかった。本当にもどかしかったですね。今振り返っても、この時期が今までで一番きつかったです。」
「でも・・・」
「その分、いやそれ以上にこの経験は僕を大きく成長させてくれました。失って気づくものがあるとはまさにそうで、野球が出来なくなって、自分が野球を好きだということ、自分の野球への想いが良くわかりました。それから、もちろんメンタルもかなり強化されましたね。自分なりに大きな収穫があったと思っています。」
怪我から半年、野球をやりたい一心で懸命にリハビリをし、見事復帰を果たした。これだけの壁を越えた彼は強かった。『あれだけ辛いことを乗り越えたから』という過去の経験は、その後の彼を前へと推し進めた。
高校最後の戦いは、“エース四番”重役を背負った。『これ以上できることはない、やってきたことに一切後悔はない』そう自負していた。1,2回戦を突破し迎えた3回戦、相手はプロ注目の投手を有していた。その投手に打撃を封じ込められ、思うような攻撃ができない。結果、チームは敗れ、甲子園の夢は叶わず、高校最後の夏が終わった。それでもやはり、『これ以上できることはなかった、そう言えるほどの努力をしていたから、1ミリたりとも後悔はない。』そういいきれた。
新たに立ちはだかる壁
引退後は心機一転、勉強に精を出した。猛勉強の末、一般受験で立命館大学に合格し、準硬式野球部に入った。入部してからは決して順風満帆とは言えない日々。レギュラーへの道はそう簡単ではなかった。夏休みの練習試合、少し肘に違和感を覚えた。『痛い。いやでもここでやめるのは妥協だ。でも・・・』その葛藤が彼を苦しめた。彼にとって、痛くてもやることより、痛いことを理由にプレイから離れることの方がよっぽど怖かった。痛くても野球をやりたい思いが先行し、無理をしたことが裏目にでた。結局、怪我が再発し、再び怪我との長期戦となった。2年目の今も怪我と闘っている。まだレギュラーとして試合には出られていない。もちろん悔しい。彼にとって、レギュラーになれないという状態も、レギュラーなるために必死になる、という経験も初めて。辛くないわけがない。
「今は踏ん張り時です。葛藤も多いですが、焦らず治すことに専念しています。全ては大好きな野球をやるためです。」
“野球は自分の全て”そう語る彼にとって、どんな境遇にいようと、野球が好きであることに変わりはなかった。
所属する立命館の準硬式野球部は強豪でライバルも多い。それでも部活の仲間は大好きだという。
「準硬式野球部は自分の個性を活かせるところだと思います。普段の生活では、かっこつけようと思って、自分を繕うこともあります。でも準硬式野球部で野球をするときは自分がありのままでいられます。」
体育会特有のしきたりをもたず、仲が良いチーム。目標は全国制覇だ。
今、新たな試練に立ち向かう伊藤選手。それでも大好きな野球を想うと彼はいつでも奮い立つ。この試練が彼をまた、一段と強くさせるに違いない。
「今できることを全力でするだけ!」
全国という舞台で、ピッチャーとしてマウンドに立てる日を信じて。
準硬式野球部が気になった方は是非観戦に行ってみてください!
試合日程配信アカウントは以下のURLから
インタビュアー:産業社会学部・スポーツ社会専攻・2回生・市川菜々香